本の原理

通勤電車をこのような至福の時間に変えるには、座る場所にもこだわる必要がある。

一番いいのは、ボックス席の窓側の席。 通路側の席や立って通勤してわずらいたら、朝のラッシュによる超満員の煩わしさを感じざるを得ない。
しかし、窓際の席に座れば、その混雑はまったくの他人事である。 逆に、その喧騒が集中力を高めてくれたほどだ。
だいたい満員電車に立って乗っていると、ギユウギユウに押されながらも何とか立っている自分が情けなくなってくる。 そして、そのうち世の中を嘆くようになる。
窓側の席に座る朝の通勤は、私にとって大切な時間となった。 そのため、どんなに忙しくても、この時間だけは確保してきた。
たとえ仕事が忙しくて深夜二時に帰宅しても、朝五時には起きて、この時間だけは確保するようにした。 ここまで書くと、では実際、朝の通勤時間で、どのようなことを行なっているのか、と思われることだろう。
実は、この時間にやることで一番効果的なのが、その日の仕事の準備。 一日の仕事のスケジュールを組み立てて、頭のなかでそのシミュレーションを行なうのだ。
職場についてから、さあ今日は何をしようか、では遅すぎる。 つまり、通勤電車のなかから、すでに仕事モードに入るわけである。

そのほかには、自己啓発のために入った研究会の資料や原稿の整理、または本を読んだり、調べものなどをしていた。 この時間を持つことができたおかげで、私の人生は一変したと自信を持っていうことができる。
通勤時間の一時間に加えて、始業までの一時間も会社の時間ではなく、自分自身の時間として活用した。 好きで朝早くから会社に来ているのだから、当然その時間は自分が好きなように使うことができる。
忙しいときは、すぐに仕事にとりかかっていたが、そうではないときは、新聞や雑誌など情報収集の時間などにあてていた。 いずれにせよ、朝、自分のための二時間があることで、心に余裕が生まれ、仕事の段取りは格段によくなったといえる。
また、仕事面だけでなく、自分自身の人生についても、さまざまなことを考えることができた。 だから、この朝の二時間は、三十歳以降の私の人生を決定したといっても過言ではない。
何でも「意識してやること」で、同じことをしても成果は格段に違ってくる。 本来、通勤電車は会社へ行くための交通の手段である。
だから、時間通りに会社に着くことができれば、それでいいと考える人が大半だろう。 つまり、通勤電車で何かをやろうという意識がない。
それどころか先にも書いたように、通勤時間をコストと考えている人は多い。 しかし、くり返すが、通勤時間は貴重な資源なのだ。
そこで、こう意識してみる。 毎日、朝晩と乗る通勤電車のなかで、これだけは成し遂げるという目標や目的を持ち、実行する。
それこそ一時間かそこらの限られた時間だ。 実現できることは限られている。

とはいえ、どんな小さな目標、目的でもいい、それを成し遂げることができれば、それは確実な進歩といえる。 「今月は通勤電車で五冊の本を読破しよう」「英単語を三十個覚えよう」など、どんな小さな目標でも構わない。
チャレンジをして、やり遂げることに意味があるのだ。 これまで、通勤電車を意識したことがなかったならば、「この朝の時間を自分を高めるための時間にする」。
こう意識することだ。 それは、意識をした時点でいい方向に向かい始めたといっても過言ではない。
意識をすれば、それに対して脳が反応して、実際の行動に表われるものなのだ。 意識は行動を呼び起こす。
それは成果に続いている。 意識するだけで、通勤電車の時間は自分自身を高める時間になる。
しかも、それは月曜から金曜まで五日間もある。 片道一時間として朝と夜で一日二時間。
一週間では十時間もの時間になる。 さらに、単純計算してみると、約五十時間弱、一年だと約五百時間もの時間になる。
一カ月ではこの時間をただ疲れを癒すために居眠りをするか、それとも高い意識を持って活用するか――。 あなたは、そのどちらをとるのかということである。
人間の成長にとって「達成感」は非常に大事な要素である。 このハードルを乗り越えることができたから、次はもっと高いハードルに挑戦しようと、徐々に高いレベルを目指すようになる。

それを後押しするのが、達成感である。 同じレベルを続けていても、満足のいく達成感は得られないのだ。
あなたの成功速度は、さらに加速する!人間は進化をする存在である。 そのため、「昨日よりも今日、今日よりも明日」と、通勤電車に乗るたびに、自分自身をバージョンアップさせる向上心を持ち続けよう。
そのなかで、結果が出るようになると、自分を退化させようとは決して思わないはずだ。 昨日の自分に戻ることは決してできない。
人間は日々、進化している。 生物学的な面から見ると、一定の年齢を超えた時点で、人間は退化を始めるといわれる。
しかし、それはあくまで生物学的な見地で、高い意識を持ち続けている限り人は進化すると、私は考える。 人間的な成長を続けていくためには、自分を見つめ直す時間を持つことが必要である。
電車に座って、通勤することができれば、毎日その時間を持つことが可能になる。 こうした時間を習慣として持ち続けていれば、あなたの成功速度はさらに加速するはずだ。
朝の通勤電車を実際どう活用すればいいのか、とよく聞かれる。 私が一番効果的だと考えるのは、その日一日のシミュレーションである。
これによって、通勤電車の時間が魔法の時間に変わるのだ。 具体的には、その日やるべき仕事が書かれた手帳を眺めたりメモ帳に書き出してみて、一日のスケジュールをシミュレーションしてみること。
職場に着いたらまずメールチェックを行なって、その後は始業までにプレゼン用の資料を作成して、始業後は取引先に電話をして、午後の会議はというように、今日がどんな一日になるのか、大まかに想定してみる。 すると、それによって大事なポイントが見えてくるはずだ。

たとえば、クライアントとの打ち合わせや会議などがあるとする。 こうした仕事におけるメインイベント――今日一日のなかで重要度の高い仕事――は何か、ということを意識することで、その後の行動がそこに向かって収斂されていく。
また、もっとも重要度の高い仕事というのは、その日のクライマックスだといえる。 そこで最高のパフォーマンスをしなければならない。
朝のシミュレーションによってモチベーションを高め、その山場をどんなふうに迎え、そして実際どんな結果に導きたいのか、そのためには具体的に何をすればいいのか、という明確なシナリオができ上がるのだ。 仕事のできる人とできない人の差は、ストーリーを描けるかどうかにある。
当然ながら、このとき描くシナリオは、架空の世界のものではなく、現実の世界を描いたものである。 それは、自分だけの視点では決して描くことはできない。
自分が置かれている状況と相手や周囲の状況、またプロジェクトの進捗具合など、仕事にかかわるさまざまな可能性や起こり得る出来事を吟味しながら、なるべく具体的に組み立てていく必要がある。 もちろんいつも自分が思い描いた通りにいくとは限らない。
逆に思い通りにいかないことのほうが多いはずだ。 そこで重要になってくるのが、最悪のケースもしっかりと考えておくことだ。

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